非対称要素を維持するときは、画面座標ではなく「キャラクターの右耳に黄色いピアス」「キャラクターの左目に傷」のように、部位と本人基準の左右をセットで扱います。Character Motion Studioでは現在、Reference Partsに左右指定と左右別の部位種別があり、生成時にもその情報を渡せます。
「画面左」と「キャラクター右」は同じではない
正面を向いているキャラクターでは、本人の右頬は見る側からすると画面左にあります。そのキャラクターが180°回転すると、本人の右側は今度は画面右へ移ります。
したがって「画像の左側に赤い模様を残す」という条件では不十分です。角度が変われば画面上の位置は変わっても、キャラクター本人のどの身体側に付いているかは変わってはいけません。
2026年のFoR-T2Iは、カメラ基準の左右と、向きを持つ物体自身を基準にした左右を分けて評価しています。同じレイアウトでも物体基準の指示になると性能が大きく落ちることが報告されており、「誰を基準にした左・右か」は現在の画像生成でも独立した難所です。
Can Text-to-Image Models Draw from the Right Frame of Reference? ↗
AIは「右耳のピアス」を常に身体構造つきのデータとして保持するわけではない
人間なら「これはキャラクターの右耳に付いたピアス」と理解できます。しかし画像生成モデルが参照画像を見るとき、その特徴が毎回「右耳という身体部位+そこへ固定された装飾」という明示的な構造データとして保持されるとは限りません。
視覚特徴としては「顔の横に黄色い形がある」「この辺に装飾がある」という手掛かりでもあります。角度を変えると画面内の位置関係が変わるため、特徴の所属先を正しく追跡できなければ、反対側へ出たり両側に増えたりします。
Text-to-Imageの空間関係を評価したVISORでも、高品質な画像を作れても、指定された左右・上下などの空間関係を正確に保つことには制約があると報告されています。
Microsoft Research:Benchmarking Spatial Relationships in Text-to-Image Generation ↗
左右対称に「補正」されることもある
顔、動物、身体、服は左右対称に近いものが多く、見えない部分を推測するときに対称性は便利な手掛かりになります。SymmNeRFのように、単一画像から見えない側を補うため対称性を明示的な事前情報として利用する研究もあります。
SymmNeRF: Learning to Explore Symmetry Prior for Single-View View Synthesis ↗
ただしキャラクターデザインでは、右角だけ長い、左目だけ黒い、片側だけ髪が長い、右袖だけ模様がある、といった意図的な非対称が個性になります。
見えない側を「反対側と同じだろう」と補うことは一般的には合理的でも、非対称キャラクターでは装飾の複製・消失・左右入れ替えにつながります。
角度が変わると左右情報の見え方も変わる
単一画像から別視点を作る問題そのものが、見えていない領域に複数のもっともらしい答えを持ちます。そのため非対称要素は、角度によって別の壊れ方をします。
| 角度・状況 | 起きやすい問題 | 確認すること |
|---|---|---|
| 45° | 傷・模様・髪飾りが中央側へずれる | 同じ身体側に残っているか |
| 90° | 見えない側の装飾が消える/両側に出る | 見えるべき側だけに出ているか |
| 反対90° | 同じ画面位置へ出て本人左右が逆転する | 反対ビューでも所属部位が変わっていないか |
| 180° | 画面左右と本人左右を混同する | 背面から見たときの回り込み位置が正しいか |
45°・90°・180°それぞれで何を見るかは、「AIで45°・90°・180°を作るとどこから崩れる?」でも整理しています。
また、単一画像から別角度を作るときの根本的な不確定性は「AIで同じキャラクターの別角度を作ると別人になる理由」で解説しています。
左右反転で反対側を作るのも危険
右90°が完成したら、それを単純に画像反転して左90°として使う方法があります。左右対称のキャラクターなら効率的ですが、非対称キャラクターでは右耳のピアスまで左耳へ移ります。
形としては自然な横顔でも、キャラクター設定としては別物です。そのため、反転は左右対称な形状の下地として利用し、非対称部分を再配置・差し替えする方が安全です。
左右反転は候補救済には使えますが、生成時の方向ルールでは「反対側ビューを単純ミラーで代用しない」「左右非対称の模様・文字・装飾は本人の同じ側へ残す」という条件を別に与えています。反転した画像は最終設定として再確認が必要です。
Character Motion Studioは「位置」だけでなく本人基準の左右を持てる
今回の原稿で重要な点として、現在のCharacter Motion Studioには本人基準の左右情報がすでに実装されています。
Reference Partsには左右共通・左側・右側の指定があり、左目/右目、左耳/右耳、左腕/右腕、左手/右手、左脚/右脚など、部位種別自体も左右を分けて持てます。
生成時にはReference Partsのside・形・色・配置・前後関係・変えてはいけない特徴がAI側へ渡されます。また、目標角度に応じて左右情報も参照選択のスコアへ使われます。
さらに角度生成側の方向ルールでは、左右非対称の模様、文字、装飾をキャラクター本人の同じ側へ保持することを明示しています。つまり現在は「画面左にあるから左」という扱いだけではなく、キャラクター基準の左右を入力できる設計です。
Reference Partsでは「右耳+ピアス」のように部位と左右をセットにする
非対称キャラクターでは「赤い模様を残す」だけでは不十分です。どの部位のどちら側に属する特徴なのかを明示します。
| 特徴 | 弱い指定 | より扱いやすい指定 |
|---|---|---|
| 黄色いピアス | 顔の横に黄色いピアス | キャラクター右耳/右側/黄色いピアス |
| 目の傷 | 顔に傷 | 左目/左側/目尻から頬へ伸びる傷 |
| 肩の星模様 | 肩に星 | 右肩側/星模様/背面まで回り込まない |
| 片側だけ長い髪 | 長い横髪 | 本人左側の横髪だけ長い/反対側へ複製しない |
Reference Partsの「左右」「位置」「前後」「変えたくない特徴」を組み合わせることで、画像上の座標よりもキャラクター構造に近い条件へできます。
非対称要素は、画像位置ではなく所属先を登録する。
右耳・左目・右肩のように部位と左右をセットでReference Partsへ持たせ、Candidateを確認してからPrimaryへ採用します。
左右非対称キャラクターの確認手順
- 正面原画で非対称要素を洗い出す。 傷、ピアス、角、模様、髪、文字など、片側だけにあるものを先に確認します。
- 本人基準の左右へ言い換える。 「画面左の傷」ではなく「キャラクター右頬の傷」のように定義します。
- Reference Partsへ部位・左右・不変条件を登録する。 必要なら重要度を「できるだけ固定」にします。
- 近い角度からCandidateを作る。 現行Angle Studioは原画と近いPrimaryを参照し、最も近い信頼角度から45°を超える場合は生成を止めて中間角度を案内します。
- 画面位置ではなく身体側を確認する。 斜めや背面で左右の見え方が変わっても、特徴の所属先が変わっていないかを見ます。
- 確認できたCandidateだけPrimaryへ採用する。 未確認の生成結果を次の強い参照へしません。
- 反対側ビューは単純反転だけで決めない。 反転を使う場合は非対称パーツを必ず修正します。
CandidateとPrimaryを分ける理由、複数角度の参照方法は角度一貫性の記事、角度ごとのチェック対象は45°・90°・180°の記事へ続けて確認できます。
まとめ
左右非対称キャラクターで起きる反転問題は、AIが単純に「右と左を知らない」という話だけではありません。画面座標の左右と、向きを持つキャラクター本人の左右が別の座標系だからです。
対策も「右を維持して」と繰り返すだけではなく、右耳・左目・右肩のように部位と左右をセットで定義し、角度ごとに同じ身体側へ残っているかを確認することが重要です。
Character Motion Studioでは現在、Reference Partsに左右指定と左右別部位を持たせ、目標角度に応じて参照を選び、Candidateを人が確認してPrimaryへ採用できます。非対称要素ほど、生成結果を自動的な正解にせず「所属先が維持されているか」を確認してから次の角度へ進む方が安定します。